基本資料
理事長所信
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- 一般社団法人旭川青年会議所
2019年度 第69代理事長 - 菅井 謙敬
- 一般社団法人旭川青年会議所
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- 2019年度スローガン
楔(くさび)の心
- 2019年度スローガン
はじめに
旭川青年会議所は、 戦後も間ない1950年に発足しました。それは、各地域に広まる青年会議所の全国的運営の総合調整機関として日本青年会議所が発足した1951年の前年のことであり、現在695の地域に存在するJCにおいても旭川青年会議所の歴史は深く、私たちの先輩は時代に素早く反応し活動力に富んでいたと言えます。そして、いつの時も根源にある理想は「明るい豊かな社会の実現」でした。それは半世紀以上を経た現在でも全く風化することのない、私たちにとって普遍的な行動指針であり、本年、旭川青年会議所の69年目を共にする私たちも常に意識をしなくてはなりません。旭川に住み、そこで経済活動を行う身として、家族や友人、同僚や従業員など、たくさんの身近で感謝すべき人たちの喜ぶ顔を思い浮かべながら、地に足を付けた青年会議所運動を行っていきます。
楔の心
本年は、スローガンを「楔(くさび)の心」としました。込めた想いは二つ。「楔」が持つ意味の通り、何かを砕き刻む楔と、何かと何かを繋ぎ強固なものにする楔です。旭川のような地方都市が、今後人口減少を受入れながら地域間競争の中で本当の地方創生を実現するには、経験や知識、プライドやしがらみ全てを度外視し、みんなで話し市民の声から本当の価値向上を目指すことが求められます。そこで必要となる楔役こそが、私たちにできることです。では、楔役に必要なことは何か。それは、先見の視座を持ちリスクを負ってでも時代に違いを生み出すこと、そして人や地域を繋ぎ強固な旭川のために積極的かつ柔軟なコミュニケーションを行うことです。2019年度は、今後の旭川の発展に向けて、内部の組織運営に対する考え方、文化、歴史、政治、経済、教育、環境、地域など事業の対象分野、そして世代や性別、人種、国籍、マジョリティやマイノリティを問わず、全てに目を向け楔の心を持ってまちづくりを行っていきます。
「受入れ方」と「戦い方」
市場の縮小や労働力の不足など、山積みの課題を抱える地方都市ですが、旭川も例外ではありません。その多くは人口流出・少子高齢化による人口減少からなる課題です。その状況下で未だ行政や一部の政財界でも人口減少を食い止める事を主たる目的としたような議論が交わされることがあります。人口は旭川に限らず今後の日本の縮図として減少することは明らかであり、旭川が今後生き残るために市民全体で共通認識を持たなければならないのは、人口減少の「受入れ方」、そして今後の地域間競争における「戦い方」です。例えば観光を例に挙げると、旭川の観光における最大の魅力は、瞬発力ではなく、持久力ではないでしょうか。旭川の観光の魅力として、何か一つの物や場所が日本一と言われることは少ないのかもしれません。しかし、自然環境に恵まれた食や産業があることや、総合医療やインフラなどの都市機能があること、そしてチェーン店よりローカル店が愛される地元風土があることは、観光地として誇るべき要素です。それらを中途半端と捉えるのではなく、持久力のある地域資源であると認識し、市民一人ひとりが広告塔となり外へ発信すべきです。そのためには、減り行く人口の中で活動的な交流人口をいかに増やすか、地域コミュニティなど関わる人の平均熱量をどれだけ上げられるかが鍵となります。未来の旭川の「受入れ方」と「戦い方」に向けて、旭川JCならではの知識と経験、フットワークとネットワークを最大限発揮し、市民一人ひとりの熱量増加を目指します。
内省できる強い組織
青年会議所運動は道場として表現されることがしばしばありますが、実際に学びのきっかけに満ちた運動だと言えます。特筆すべきは、時間とお金を使い、そして仲間と関わり「まちづくり」という机上ではない実践的な教材を通して成長の機会を得る事です。そして、その学びの多くは個人の成長の他にも組織マネジメントやチームビルディングなど、自身の所属企業や生業にも照らし合わせられるものです。しかし、本来の素晴らしい学びの要素もその枠組みが堅く四角いままだとメンバーの継続意欲は得られません。組織の在り方と進め方に、常により良い変化を求め可能性を探り、仲間と共にぶつかり合いながら内省し、組織の発展を目指します。そして、人や地域に感謝される気持ちをしっかりとメンバー同士で共有し、個と組織両軸で成長を実感することで、旭川JCの更なる推進力となり、更には志を同じくする者の発掘、つまり会員開発にも繋がるはずです。
未来のための社会性
青年会議所の綱領に、「社会的、国家的、国際的な責任を自覚し」という節があります。その中で本年は「社会的」という部分を深く考え運動を展開していきます。社会性が含む意味合いとしては、未来の人と未来の地域の影響に対して倫理的にきちんと考えているか、ということです。現在、「サステナブル」や「エシカル」など様々な言葉がマーケティングの切り口で海外から運ばれ日本でも広がりつつあります。しかし、それらの考えは、「三方よし」や「世の為人の為」、あるいは「お天道様が見ている」など、多くの言葉で古くから表現されている私たちが誇るべき日本の倫理観そのものです。普段の行動一つひとつが、未来の人や地域にどのような影響があるのか、どのように未来に繋げられるか、あるいは繋がってしまうのかを、社会的な責任として自覚し、未来の旭川を感じてJCの運動を表現していきます。
五感が導く豊かな心
地域に根付いた運動の中で、普段気づけない潜在的な課題に目を向ける意識も必要です。豊かな社会の実現という尊く壮大な理想における運動は多岐に渡ります。メンバーの熱心な調査研究から課題捻出を行い、提案や提言、意識喚起などの様々な運動を行いますが、地域に開かれ近い存在である故に、実際目に見える身近な課題に先に目が行ってしまうことがあります。まちの課題は人目を引きやすい明らかな課題の他にも、目に映りにくい潜在的な課題も存在します。旭川が抱える課題に対しても従来の切り口に加え、四季や文化に触れ五感を通して人に感動や喜びをもたらし、人生を豊かにする力を持つ分野への視点も意識付けていきます。行政や他団体がアプローチできない分野に対しても積極的に社会実験を行い、未来に投資できることも旭川JCを楽しむ醍醐味の一つです。
巻き込む力の広域連携
近年の旭川JCの運動において、数多くの誇るべき点の一つに人と地域に対する巻き込み力があります。いわゆるパートナーシップの構築です。現在、日本全国どこでも今後の地域の発展には、地域の特色を活かし地域や他団体との協働が必要不可欠と言われる中、烈夏七夕まつりが、「見るまつり」から「参加するまつり」へ進化を遂げ、近隣町村や行政、他団体と積極的に協働連携している姿にも代表されるように、他の事業でも市内の中高大を含む多くの学校機関や学生ボランティアとの連携や、旭川市や北海道庁との共同プロジェクトの実施など、旭川JCにおける官民協働のまちづくりは一層確かなものになっています。その連携において次のチャレンジはより広域な視野を持つことです。旭川は道北の玄関口や道北経済の中心とも言われますが、道北を活かす立場でありながら、道北に活かされている立場でもあります。今後の各地域の発展に向けたパートナーシップ構築の考えは、旭川に限らず上川、そして道北など広域な考えの下で運動を展開していきます。「道北の心は一つ」です。
2020年に向けた楔
旭川JCは昨年、第69回北海道地区大会の2020年度主管立候補を行い、見事にその機会を得るに至りました。地区大会は、北海道全域から働き盛りで生産年齢でもある青年会議所メンバーが一堂に集う機会であることはもちろん、多くの参加者に向けて旭川と道北地域の魅力や北海道の未来を発信する絶好の機会ですが、同時に大会とその準備期間自体も様々な要素を含む会員研修の場となります。本年はその開催に向けた準備期間にもなりますが、その期間を義理や任務を果たすだけの参加や、メンバー同士の交流の場のみとして捉えるだけでは、面白みに欠けてしまいます。その過程を通して、北海道地区協議会への参加を行い、他地域で接触するメンバーや諸団体とどう関わり、開催地として旭川の存在意義をどう表現するのか。地域を跨いだコミュニケーションの中でみんなで考えることが、面白みに満ちた会員研修となり、そして2020年を迎えるにあたっての大きな楔となるはずです。
さいごに
所信として、本年の旭川JCのことや、旭川の課題、私たちがあるべき姿とその方向性について述べましたが、私たちは「たかが地元の若者」です。若者らしく個性を忘れずに、元気よく、きまり良く、生意気な楔役となりましょう。それが2019年度理事長としての私の「らしさ」と、想いです。